せみ取りができたあの頃。
その年の夏休み、息子は近くの公園に行って
せみ取りをするのが大好きでした。
帽子を被り、せっせとせみ取りに行く息子の姿は
健気で純粋そのものでした。
まだ私が店に入らない時間に、
「おかあさん、」
「ん?」
「僕がせみを取っているところを見て欲しい。」
(ふむ、ふむ。)
「せみを取っているところを見て欲しいんじゃなくて、
僕がどんなにせみ取りが楽しいかを見て欲しいっちゃん。」
なんて、かわいいことを言われたら
行かない訳にはいきません。
今思えばあの頃は、真夏といっても
30℃を超えるなんて事は一度もなく、
稀に27℃とか28℃とか今では考えられない
正常な気温でした。
2km離れた小学校に登校する時も
別に水筒の用意をする必要もありませんでした。
そう思うと、今の屋内はもちろんですが
屋外での部活の練習や試合は
考えられない暑さとの闘いでもあり、大変ですね。
夏に遂に30℃を超えた気温計を見て
驚いたのを今も覚えています。
それ程30℃を超えたのが驚異的でした。
今は30℃を超えるなんて当たり前、
下手すると40℃近くになる地域もあり、
クーラーを付けないと生きていけない夏の夜が続きます。
私は息子の要望通り、喜んで息子と公園に行って
夢中になってせみ取りをする、
夏休みの大切なその時間に付き合えた後
仕事に向かいました。
ところが、夢中になりすぎて
暑さにのぼせてしまった息子が店に来て
急いで病院に連れて行くと、
「日射病の手前です。」と先生が。
ごめんね、ごめんね。よく自分の判断で
店まで帰って来たね。
その頃は日射病、今は熱中症という
危機的用語に変わりました。
それを思うと、こんな可愛かった息子のせみ取りは
今のボクたちは経験がないのかも。
せみ自体、暑すぎだーと思いながら
短い生涯を終えるのかな。
この3年間はコロナで色々なことがガラッと違う
縛られた生活だったし、
やっとマスク徹底から緩和されたものの、
外に出るとまだまだマスクをしている人だらけです。
この先、春が過ぎて梅雨が明けるとまた
ジリジリと暑い夏の到来ですが、
それでもマスクの風景なのかな。
去年、夏が大好きなんて言う私の友人が、
入道雲を指差して、「見てごらん。」と。
「力強さを感じない?凄いと思わない?」
確かに迫力満点!モリモリしている!ことに気づきました。
息子がせみ取りに夢中だった頃のような
30℃以下の夏にはもう戻らないのなら、
今年の真夏は、暑い暑いと言うばかりではなく、
眩しい空を見上げて、入道雲のたくましさを感じ、
力を貰おうと思います。