れっかの、あるあるブログ

~いろんなことあるけど、前を向くのをやめないでね~

どしゃぶりの雨の夜でした。

父の症状の変化です。

 

大人のおむつがまだ出回っていないころでした。

 

夜中にトイレに行く父に母が付き添ったり、

失禁したりするようになり、

母の体力を考え、

父は大きな病院に入院しました。

 

68歳の手前でほぼ寝たきりの父の生活と、

母が病院まで出向き続ける毎日が始まるのでした。

 

毎日父の横にいる母に比べれば

ほんの少しの時間ですが、

私は仕事が終わったその足で、

母が帰った時間に

父に会いに行っていました。

 

 

ところがです。

 

ある日、父の病室に行った時、

父は立ち上がり、ハンガーに掛けてあった

スーツを着ようとしていたところでした。

 

えーっ、

 

寝たきりだった父が目の前で立ち上がっています。

 

 

「早く銀行に小切手を持って行かないと

不渡りになる!」

 

父は真剣な表情でそう言います。

会社の資金繰りの心配が

脳裏にこびりついていたのでしょう。

 

 

自分が経営者だったことを

突然思い出した、とは言え、

 

立ち上がる力をわき起こせるものなのかと

父を凝視してしまいました。

 

 

「お父さん、大丈夫よ!兄ちゃんがするから!」

 

と止めても、

父は別の向こうを見ています。

 

 

 

その時、気づいたのです。

 

 

 

父の目の前にいる私が、私とわかっていないと。

 

 

 

看護士さんが来て

落ち着いた父をお願いして病院を出ると、

 

外はどしゃぶりの雨で、

涙が止まらない私には

どしゃぶりの雨に打たれて

泣いている自分に気づかれないのが

好都合でした。

 

 

急に降り出した雨に、

手を挙げたタクシーに乗って

家に向かいます。

 

びしょ濡れで帰って来て主人に、

「ごめんね、遅くなって。

お父さんに会いに行ったら時間がかかって。

お父さんが私を私とわからなかった。」

 

と悲痛な気持ちで話す私に

 

 

主人はよほどお腹が空いてイライラしていたのか、

表情を変えもせず、

 

 

「早くご飯作って。」

と言いました。

 

 

 

 

 

(...え?)

 

 

私の心は、

再びどしゃぶりの雨に打たれた思いでした。